手探りで、女は耳飾りを探していた。
 この広い中庭を明かりもなく探すのは容易なことではない。
 しかし、探すほかはないのだろう。
 すでに中へ入る扉には錠が降ろされた。
 それは夜明けまで探せという意思表示に他ならない。
 嫌がらせなのは女にもはじめからわかっているのだ。
 だから、耳飾りなど本当は落ちているはずもない。
 それでも、女は黙って耳飾りを探していた。
 そうするしかないことも、この二年近く、いやというほど思い知らされてきたのだ。
 年季が開けるまでは、ここにいるしかない。
 あと少しでそれも終わる。
 そうしたら、弟のところに戻れる。
 また一緒に暮らせる。
 それだけが彼女を支えていた。
 その内、雲が淡い月明かりさえも消してしまった。
 いっそう暗くなった中庭に、女はふと、何かの気配を感じたような気がした。
「誰かいるの?」
 小さく、女は呟いた。