覚悟を決めて短刀を構えなおすと、壁に寄りかかりながら、角を曲がってくるはずの男達を待った。
 その時。

「追われてるの?」

 寄りかかった壁から、声が聞こえた。
「!?」
 顔を横向けると、小さな頭が、扉の隙間から自分を見上げていた。
「扉を閉めていろ。怪我をするぞ……」
 暗がりの中でも、子どもの顔は白く見えた。
「でも、お兄ちゃん、闘えなさそうだよ。うちに入りなよ。うちの扉は閉めちゃえば、暗いからわかりづらいんだ。早く」
「……」
 一瞬迷ったが、男は子どもの声に従い、中に入った。
 子どもは素早く扉を閉め、錠を下ろす。
 男達の足音が角を曲がり、家の前を通り過ぎていくのを、壁越しに感じた。
 それが限界だった。
 ずるずると壁に背を預けながら崩れ落ち、男の意識は途絶えた。