「…でぇ、体育館から飛び出したとこまでは良かったんだけど、その後どうしよって思うわけよ。
陸部ですばしっこい木崎チャンはとっくに視界から消えてるし追っかけようがないから、もういいや!って思ったんだけど… 」
そこまで言うと、喉の奥を鳴らしたような小さく短い笑いが聞こえた。
かすかだったけど確かに伊藤が笑ったんだと思う。だって口元緩んでるし…
悪戯っ子みたいな顔した伊藤と目が合う。
「 さっきまで雨降ってたから土もまだ固まってないし、誰かがその上を勢いよく走ったら当然そこには足跡がついてぐちょぐちょになるわけ。
だからマンガの世界かって突っ込みたくなるくらい、キレイに誰かさんの靴の形が並んでて。」
…そうだよ。確かにそうだ。うちさっきは逃げるのに必死すぎて、雨止んだばっかとかそんなこと忘れてたけど。
足元を見るとうちのローファーには土がこびりついて、もはや元の色もわからない状態。
こんなになっても気づかないとか、うちどんだけ必死だったの?…と、自身に苦笑。

