「…はい、完全にボーッとしてましたよね?

遅刻してきたんだからノート早く取らないと消されますよ?


それとも木崎さんは優秀でノートを取る必要もないと?」



先生のお厳しい一言。



「…いいえ、すぐ写します。

すみませんでしたっ!」


すっかり小さくなって俯き加減に再び謝る。



でも…


わざわざ皆の前で嫌味たらしく説教しなくたっていいじゃん!

それに消されちゃうって、あんたが消さなきゃいい話なんだけど!


皆の前で大恥をかいて、すっかりブー垂れ夕花になったもう一人の自分が先生を非難していた。




…ふぅ



やれやれ、溜め息を一つ。


ノートを取り出そうと鞄のファスナーに指をかけた瞬間……








「…それと木崎さん。


今日の遅刻届け、なるべく早く出すように。」



教卓に戻った先生が、これまた皆に聞こえるのには十分すぎるほどの声で
うちの目を覗き込むように忠告なさった。



…もぅ! だからわかったってば。

出せばいいんでしょ?出せば…


もはや、うちの耳を通過した先生の声の集合体は
わざとらしい嫌味な言葉、としてしか認識できなくなっていた。




「…はいっ!」


半ばヤケになって大きめの声を出すと、

ようやく教卓の方に向き始めた皆の身体が
再びうちの方へと向けられた…







………うぅっ やっちまった。

後悔しても、もはやどうしようもない。


好奇の視線に耐える夕花だった。