だから中学に入ったうちは迷うことなく陸上部に入部した。



いくら先輩っていったって1・2年しか変わんないんだしうちの方が速いでしょ?なんて調子にのってた。



でも入ってみてわかった。うちは…井の中の蛙だー!ってね。



小学校のときは男子入れても50mのタイムはうちが一番だった。7.6秒…くらいだったかな。




中学校に入って一ヶ月たって、春のシーズン戦が始まるってことで100mのタイムトライアルが行われた。


うちは相当の自信があった、一位になる自信が。でも、結果は...惨敗。



小学校では群を抜いて速かったはずのうちが、オリンピック出れるよ!とまで言われたはずのうちが...30人中、24位?



ビリから数えた方が早い。うちってこんなもんだった?こんなしょぼかったの…?



ううん、違う。これが陸上の世界に入るってことなんだ。やっと理解した。



うちが今までいた世界のは雲の下。雲の上に何があるかも知らないで、その世界でぬくぬく生きてたんだ。



自分のちっぽけさを知らされたときはさすがに落ち込んだけど、雲の上の世界に足を踏み入れたことでどんどん成長していく、



限りなどない人間の可能性を目の当たりにすることができるよーになって、人間の本能的喜びを得られるようになったんだ。



それは、何にもかえがたい一つの幸せを見つけ出せたんだって、うちは思ってる。