篠田なつめは、必死に焦っていた。

 自分が焦る理由なんてどこにも見当たらなかったけれど、
 何故か他人事には思えない気がした。


 課題を提出し終えたその足は軽やかにステップを刻んでいたのに今では数歩前が羨ましい程に重い。
 向かっていた先は、中学から仲良くしている、笹塚荘太の元だった。


 今日は年に一度の荘ちゃんの誕生日だ。


 仲良くなってから、きっかけは私の方からだったのだが、
 一緒に寄り道をして些細なプレゼントを買って公園で適当にだべってから帰る前に渡す、
 というのがここ数年の私たちの誕生日の過ごし方だった。

 だからこそ、面倒な課題を提出し終えた事は、
 放課後に待つ些細な嬉しさのためのノルマのひとつだった。