「うそ、本当」


 動くのを躊躇っていた先輩の手が握っていたシャープペンが、ぽとりとノートの上に転がった。

 もう一度、ゆっくりと上がる先輩の顔は少しぼやけてた。
 ああ、どうしよう。言っちゃったよ。


「一年の時からずっと好きでした、」


 先輩が立ち上がって前のめりになって手を伸ばした。
 一瞬身体に緊張が走ったけれど、その手は私の涙をすくっただけだった。
 先輩はそのまま私の頬に手を添えて、安心したように笑みを浮かべる。


「良かった。これで勉強するフリしなくて良くなった」
「え、」


 思いがけない言葉に驚く。
 その言い方、悪い方にとったほうがいいですか……!?

 不安たっぷりにまじまじとみつめると先輩はクスリと笑う。


「わかんないかなぁ? 砕いていうと、“理由を作らなくても、会えるんだよね?”ってこと」


 西日の反射か自分の言葉に照れてか、赤らんだ頬を先輩は腕で隠した。



end.