でも不思議と、そのとき、あたしのブレーカーは落ちなかった。
彼に断られるのはこれで二度目だけど、だからといって痛みに慣れてしまったというワケじゃない。
確かにショックは受けた。ココロの痛みだってある。
それなのに、あたしの思考回路は問題なくフツーに機能していた。
「気づいてると思ってました……」
「いや……全然気がつかなかったよ」
「………」
「あたしだってバカじゃないし、渋谷さんに好きな人がいるって知ってたらコクったりしない……ってか、あたし、バカみたい」
あたしはあなたへの想いを貫くために、スイミングスクールからのお誘いを断って、工場で働き続けることに決めたんだよ……。
「渋谷さんに、そーいう人がいないんだったら、その気になってくれるまで何年でも待ち続けるつもりでいたけど……」
「………」


