その一部始終を少し離れたところから見ていたあたしのココロが少し、でも確かに乱れた。
そして思った…、
“渋谷さん、星野さんとフツーに話しとかするようになったんだ……”
…って。
でも、あたしの存在に気づいていない彼は、片付けが終わるなり誰とも話さずに、さっさと一人で帰ろうとしはじめた。
「あ、待ってっ」
慌てて声をかけて駆け寄るあたし。
「渋谷さん、お久しぶりだね」
「あ…はい……」
そう答えたときの彼の表情が、あたしには少し気まずそうなソレに見えた。
「もう作業には慣れた? 師匠のあたしがいなくてもヘーキ?」
「はい……」
「なによ、あいかわらずそっけない返事だね」
「すみません……」
「今日は残業とかないんでしょ?」


