眞鍋さんは硬貨を親指で宙に弾くと、回転しながら落ちてきた硬貨を右手でキャッチし、その手をすばやく左手の甲に重ねた。
「勝負!」
あたしが注目する中、眞鍋さんがゆっくりと右手をどけると、その下から“オモテ”を向いた百円硬貨が現れた。
「コイン占いを信じる、信じないは自由さ」
「………」
「でも今夜だけはダマされたと思って信じてみなよ。…って言ってる意味よく分かんねぇけど。俺のことは信用しなくてもいいから、占いを信じてがんばれ、奈央ちゃん!」
眞鍋さんはそう言って微笑むと、あたしの肩をポンと叩いた。
「…ありがとうございます!」
あたしは眞鍋さんに頭を下げて、カラオケ屋さんを飛び出した。
「…!」
するとカラオケ屋さんの前に停めてあるバイクの傍らで、タバコを吸いながら一人たたずんている渋谷祐二の姿が見えた。
「渋谷さんっ…」
あたしが駆け寄ると、彼は不思議そうな顔であたしの顔を見た。


