「話したいことがあるから連絡して」

…って言って、このメモを渡そう。

面と向かってじゃなきゃ、ちゃんと言えると思うし……。


でも午後の仕事がはじまると、周囲の目もあって、渡すタイミングが全然なくて…、

「キ~ン、コ~ン、カ~ン、コ~ン…」

ついに就業時間終了を知らせるチャイムが工場構内に鳴り響いてしまった。



“終わりだ……仕事の時間も、あたしの恋も、みんな終わりだ……”

そう思って、あたしがラインを離れようとしたとき、思いもよらない奇跡が起きた。


「待って。夏目さん」


ナンと渋谷祐二のほうから、あたしに話しかけてきたんだ。

しかも“夏目”って、ちゃんと名前で呼んでもらったのは今日がはじめてだったりする。


はじめて名前を呼んでもらったのが嬉しくて、それだけで飛び上がりそうになってたんだけど、あたしは平静を装って返事をした。