「いや、師匠とか弟子とかって関係じゃなくて、その……とにかく、あの人となかよしになりたくて……」
「ふぅん、なかよしにね」
「でも渋谷さん、おとなしいでしょ? 話しかけても全然会話が続かなくて…。あたし、嫌われてるのかな……?」
「弟子に嫌われるほど、シゴいてるワケ?」
「いや、そんなことはないつもりだけど」
「じゃあ、コイツに訊いてみよっか」
眞鍋さんは、そう言ってサイフから百円硬貨を一枚取り出した。
「オモテが出れば嫌われてない。ウラが出れば嫌われてる」
眞鍋さんは硬貨を親指で宙に弾くと、回転しながら落ちてきた硬貨を右手でキャッチし、その手をすばやく左手の甲に重ねた。
「勝負!」
あたしが注目する中、眞鍋さんがゆっくりと右手をどけると、その下から“オモテ”を向いた百円硬貨が現れた。
「よかったね。奈央ちゃん、嫌われてないよ。コレ、けっこー当たるんだよね」
「そーなんだ」


