必死で水着を拾い集めていたあたしの耳に、聞こえるはずのない声が聞こえてきた。

驚いて顔を上げると…、

「えっ…なんで！？」

本当なら今日の夜、出張先から帰ってくるはずの良樹が、あたしの花柄のビキニのブラを手に、なぜかあたしの目の前に立っていた。

あたしはその手からブラを奪い取って言った、

「なんで、こんな時間に帰ってくるワケ！？」

「なんだよ。仕事が予定より早く終わったから帰ってきたんだけど、なんか、まるで帰ってきちゃいけねぇみたいな言い方じゃね？」

「…！」

「アパートの下に、軽トラが停まってるから、誰か引っ越しでもするのかと思ったんだけど、まさかお前の引っ越しとはな」

「………」

あたしは黙って唇をかんだ。

あたしの予定では良樹が帰ってくる前に綺麗サッパリ引っ越しを終わらせて、出張から帰ってきて“もぬけの殻”になっている部屋を見せて驚かせることになっていたのに……。

「ココを出て、どこに行くつもりなんだ」

「は、派遣会社の寮に入るよ…」

「そっか…俺があれだけ反対したのに寮に入ってまで工場なんかで働くつもりか」