“井の中のかわず、大海を知らず”っていうけど、あたしは井の中のケロちゃんだ。



そんなあたしにとって今回の採用試験は、はじめて乗り越える試練みたいなものなのかもしれない。


今回の採用試験では“面談”、“性格判断テスト”の他に、作業適正を見るための“実技試験”が行なわれた。

実技試験とは、積み木のようなものを決められた位置、決められた向き、決められた順番で制限時間内に組み上げるというもの。

フツーの精神状態なら幼稚園児でもできるような作業だけど、ストップウォッチで時間を計られながらとなると、緊張のあまり指が震えて、そう簡単にはできなくて……。

結局、3度目のチャレンジで、ようやく制限時間ギリギリでクリアーすることができた。


あたしはずっと水泳をやってたし、“運動神経”には自信があったんだけど、こーいう指先の作業となると運動神経よりむしろ“器用さ”が要求されるみたいで、あたしはすっかり自信喪失状態に陥ってしまっていた。

だから数日後、ほとんど諦めていたにもかかわらず、採用内定の連絡があったときには、期待していなかったぶん、いっそう余計に嬉かった――――