「行ってらっしゃい、荒木さん」
「あぁ、君も気を付けて学校に行くように」
いつも通りの朝。
愛しい人を見送って、私も支度を始める。
彼と私は住まいを共にする仲。勿論恋仲ではないし、血の繋がりがあるわけでもない。
天涯孤独だった私をお母さんの知り合いである荒木さんが引き取った、それだけの話。
寝食を共にしはじめてもう六年になる。
気が付けば、私は荒木さんの事を好きになっていた。どんな時だっていつも傍にいてくれたのは彼。多少年の差が、17歳と36歳という年齢差があっても…恋に落ちるのは不思議じゃないと思う。
「まぁ実りそうにないけど」
深く溜息を吐いた。
仕方ない、だって私は子供。背伸びして見せても大きくなって天国の両親も喜んでる、何て笑って言うんだ。
あの時どれだけ悲しかったか、きっと荒木さんには分からない。
でも、まだこの初恋を諦める方法が分からなくて。
