特定の人物と訳ありの遊女しか入ることを許されない離宮は、幻のような赤や黄色の艶やかさはなく、まるで隔絶された青一色の廊下が続く。 奥の奥、海がよく見える位置にある部屋へ通される。 蝶を象った襖を開けば、中にいた他の禿が男に笑いかける。 「紅は起きているかい?」 「アタシは此処だよ」 もうひとつの襖が小さな音を立てて開かれる。 艶やかな黒髪を華の髪飾りで結い上げた、くすみのない小麦色の肌を萌葱色の着流しで包み、紅と呼ばれた遊女は笑いかけた。 「風邪を引いたと」