「かったりぃ…。あ、やべ、家の鍵持ったかな…」


夜。

日は落ちたが、都会の夜はそれほど暗くはならない。

街灯、ネオン、車のライトその他。

いろいろな光が街をこれでもかという程照らしている。

悠楽は、そんな道を帰路に取っていた。

いつもは車なのだが、今朝はエンジンのかかりが異様に悪く、朝の機嫌の悪さも相まって『このポンコツが!!』と叫んで電車で出勤する事にしたのだ。

「うわ、眩しいな。なにもここまで光らなくても…。全く何が京都議定書だ、まずこういうのから変えろっつーの。だから外国に余計な金払うことになんだろうが、日本経済も借金まみれだってのによ…」

一人でぶつぶつ呟きながら、ただ歩く。

夜でも人は少なくない筈だが、彼の周囲は見事に人気が無かった。

やはり魔王のような外見からして近寄りがたいのだろう。