音と共にドアが開く。

同時にクラス内のざわつきも消え失せる。

しかしそれは音のせいではなくーー、音に続いて教室に入ってきた担任のせいだった。

担任、悠楽が滅多に見せないような沈んだ表情をしていたからだ。

ただし初対面でも読み取れるようなわかりやすいものでは無かったのだが。

「…なんだお前ら。気持ち悪い程黙って」

しんと静まり返ったクラスを訝しみ、悠楽はほぼいつもの感じに戻る。

それにある程度安心したのか、生徒たちは再び活気を取り戻した。

「先生、どうしたんスか浮かない顔して?電話で女にでもフラれましたか?」

「違う」

「じゃあ誰からですか、男ですか女ですか!?」

「…女」

「ああああ!やっぱりフラれたんだ!15年間の片思いの末、綺麗にフラれたんだ!」

「どんだけ壮絶な悲恋だ」


悠楽はため息をつきつつ、教卓へと向かう。

そのため息に、どのような意味が込められていたのかはーー、本人でさえわからなかった。


今は、まだ。