「どこ行く?」
湯川くんは、あの申し訳なさそうな笑顔じゃない、すっきりしたような笑顔であたしに問いかけた。

「どこでも、どこまででも行っちゃいたいね。」

その言葉に湯川くんは嬉しそうに笑った。
「俺、咲多のそういう所初めて見た」
「えー?」
「何か、すっきりした感じじゃん」
「そうかな?」
「そうだよ。咲多、いつも周りを気にして気を張り詰めてる感じだった。」
ちょっと感動した。そんなに見てくれてたんだ。気付いてくれてたんだ。
「咲多は優しいからね。そうなっちゃうのも分かんなくは無いけど…」
「違うよ」
湯川くんになら、話しても大丈夫かなと思った。
というか、話してしまいたかった。
あたしの過去も受け止めた上で…
愛して欲しかった。

自分は何て欲張りなんだろう…
少し自己嫌悪に陥りながら口を開く

「怖いだけなんだ。皆を慮ってる訳じゃないんだ。自分が傷つきたくないだけなんだ。居場所を無くして傷つきたくないだけなんだ。」

湯川くんは何気なく公園に入り、ベンチに座る。あたしも同じように座り、また口を開く

「ウチのお姉ちゃん、死んじゃったんだ。遊園地であたしがワガママ言ってケンカして。その帰りに駅のホームで酔っぱらいに絡まれて、線路に落ちちゃったんだ」
「最後に、かけた言葉が「お姉ちゃんなんか大嫌い。」で。」
「ホントに何であんな事言っちゃったんだろうって。」