先生とシンデレラ

「もぅ、いい。帰る。」

先生はそう言うと私の手をソッと握って。

「ハァ?馬鹿じゃないの?あんた何のために来たのよ!羅々ちゃんにモデル体験させるんでしょ!」

…“モデル体験”?

初耳だった。

それは。

つまり。

ここで。

本当の撮影場所で。

私が。

ど素人が。

プロのカメラマンさんに。

プロのモデルさんの前で。

撮って貰うって事で。

…え?

嘘でしょ?

「そうだけど。やっぱりいい。羅々、帰ろうか」

「やっぱりいい。って何よ!こっちはもぅ皆に話しちゃったのよ!!」

「へぇ。だってさ、大事な羅々を預けるのに、姉さんじゃ、駄目みたいだから。」


「だ、駄目って何よ?!失礼でしょ!!」

「へぇ。姉さんにも”失礼“って言葉、辞書に載ってたんだ。知らなかったな。」

「ムカつくー!」

「あっそ。」

「~~っ!もぅいいわよ!やってやるわよ!」