先生とシンデレラ

無意識にも先生のスーツを握り締めていた私。

先生はその事に気づいた様子で、私のほうを振り返って、

「…羅々。大丈夫?」

と言った。



「…大丈夫…です。」

「…本当に?…人見知り激しい方だったっけ。」

…見てる。

あの女の人、私の事見てる。

…なんで制服で来たんだろう。

先生に『一回家帰って着替えてもいいですか』って聞けば良かった。

こんな格好じゃ子供にしか見えないのに…

「…羅々」

周りを見渡すと

目に入ってくるのは大人っぽい女の人ばかり。

高校生なんてきっとこの中に一人もいない。

…なんで。

…なんで“高校生”なの

「羅々!」

「…っ」

私が考え事をしていた間も先生は私の名前を呼び続けていたみたいで一向に返事をしない私の顔を覗き込んできた。

「具合…悪いの」

心配そうにそう言って。

「…羅々、帰ろうか?」

「…い、え…。大丈夫…です。」