先生とシンデレラ

先生は、…来た、と一言ボソッと言ってゆっくりと振り返った。

…“来た“?

どうゆう事?

そんな事を考えている間にも女の人は私と先生との合間にある距離を詰めてくる。

…。

「…何」

無意識に先生の背中に引っ付いてスーツを引っ張っていた私。

「…」

私が黙っていると先生はしばらく私の事を凝視してから、フッと笑って、

「しょうがないな…。しばらくそのまま隠れてなさい。」

と言って私がスーツを引っ張っていた手を上から握った。

…。

トクン…ってした。

「もー、蓮ったらほっっんと影薄いわよねー!来るって聞いてたから、少し探してたんだけど…この人数でしょ?全然見つからなくてさぁー…」



い、いつの間に…

「…うるさいな。悪かったね、影薄くて。」

「本当よー、もー、またこんなサラッサラの地味ーな黒髪にしちゃってぇ…。茶髪にこの前してあげたでしょー?」

…そう言えば。

この前一日だけ茶髪だった事があった。

皆は
“きゃー!ますますかっこいい…”
“先生って何でも似合うのは何で⁈”
“いっそ赤とか!”
って言ってた。

その日は一日中先生は注目の的で。

いろんな子から話しかけられて。

いつも
“加藤のどこが良いの?オジサンじゃん。”
とか言ってる子まで
“わ、かっこいい…“
って言ってて。

案の定先生は次の日から黒髪になってたけど。

しばらく“茶髪コール”は止まなかった。

「…先生がそんな事して良いわけ無いでしょ。生徒の悪い見本になる。」

先生がそう言うと。

その女の人はハァーと大きいため息を吐いて
「固いわ…固すぎる!!あんたって本当に高校から変わらないわね!進化しなさすぎよ!」

「人間は変わらないのが一番幸せなんだよ、知ってた?」

「はぁ⁈あんた、何言ってるの?つっまんないじゃない、そんなの!」

…“高校から変わらないわね!”

これは先生の高校時代を知っているから言える事。

どういう事?

この女の人…

先生の何?