先生とシンデレラ

「…そんな事言うなら教えて下さいよ!…ビックリしただけなのに…」

今にも泣きそうな声に気づいたらしく先生は慌てた様子で

「…悪かった。」

と言った。

「…ごめん。謝るから…泣かないで…」

そう言って苦しそうな顔で見て来て。

…ずるい。

ずるい、ずるい、ずるい。

そうゆう時だけ優しくして…

「…じゃ、じゃあ、私の質問に答えて下さい」

私が涙声でそう言うと先生はちょっと考えてから、答えられる範囲にしてね、と言った。

「…はい。
えっと。まず何で工場で撮影してるんですか?もっとまともな場所あるのに…」

そう言うと。

「…いかにも“撮影してます”って所で撮影出来ないからじゃないの?先生もそこら辺は良く知らない。」

「…でも。ここだって十分怪しいですよ。あんなに警備員いて…」

私が先生の返答に納得出来かねていると。

「…先生もそこら辺は良く知らないって言ってるでしょ。…次。」

先を急かされた。

私はしょうがないので一番引っかかっていた質問をする事にした。


「…何で先生がこの場所知ってるんですか?…入れたんですか?」

…確か先生はカードを最初に見せてた。

この工場に入る時も、車を停めた時も。

その時は、
“何だろう、あれ…?身分証明かな?”
ぐらいにしか思って無かったけど今になってICカードだと気づく。

先生は、やっぱり来た、と言わんばかりにため息をついて

「ーーそれは」

と言い始めた時。

「あ、いたいた、コッチよ、蓮!」

と言う女の人の甲高い声が遮った。

声がした方を振り向くとその先には綺麗な女の人が立っていて。

…モデルさんかな。

そう思ったその時。

浮かび上がる一つの疑問。

“蓮!”

今この人先生を呼び捨てした…