先生とシンデレラ

「…そんなところも可愛いけど。」

…そう言ってニコッと笑って。

「じゃぁ羅々、レポートの反省しようか。」

と言った。

そうして先生はバサッと持っていた私のレポートを机においてから私と向き合う形で先生がさっきまで座っていた椅子に再び腰を下ろした。

「…レポートだけど。」

先生はそこで一旦言葉を切って。

パラパラとレポートを眺めながら言った。

「初めてにしては良く出来てた。」

「…ほ、本当に?!…ですか」

普段褒めてくれない先生だけに嬉しいくてつい敬語を使うのを忘れていたので後から付け足したのだけど…

ずいぶん滑稽な日本語になってしまった。

…でもそっか。

褒めてくれたんだ。

私の頭の中には先生が褒めてくれた喜びしか無かったのだけど…

先生は違ったみたいで…

「…“本当にですか”って何…」

と言って笑うのを必死に堪えていた。

「…」

私が恨みがましい顔をして睨んでいるのに気づいたらしい先生は、居心地が悪そうに、コホン…、と咳払いをしてから

「…インターネット使って調べたんでしょ。」

と言った。

私が控えめに、はい…、と返事をすると先生は

「…だからホームルーム中眠そうにしてたんでしょ。」

と言って、意地悪そうに笑った。

「…何で分かるんですか」

私がそう聞くと先生は

「…“何で”?…当たり前でしょ。羅々の事なら何でも分かるよ。」

と言った。

…“羅々の事なら何でも分かる”

きっと先生にとっては何気ない一言だったと思う。

なのに。

私はその言葉におかしい位に胸がきゅんとした。