「…先生、早く行って下さい。」

なかなか離れようとしない俺の事を気遣って、羅々は抱きしめる俺の胸板を軽く叩く。

「あのさ。」

「…はい?」

赤い羅々の顔を見つめながら。

「それわざとやってんの。」

その問いに羅々は、それ?、と首を傾げる。

やっぱり、俺には手強い相手だ。

そんな事を考えていると。

「…っちょっと、蓮!」

姉さんがいきなり入って来て。

羅々を抱きしめてる俺を見て。

姉さんはつかつかと歩いて来ると、俺の頭をべしっと叩いた。

「あんた何やってんのよ!せっかく着飾った羅々ちゃんを困らせないで!」

「困ってないよ、ねぇ、羅々。」

羅々はまた顔を赤くして黙り込む。

「っくっついたからと言って、イチャイチャしすぎよ!!撮影出来ないから、ディレクター、困ってんのよ!私の知り合いなんだから、恥かかせないで!ほらっ、行くわよ!」

姉さんに顎で指図されて。

仕方ない、と羅々を離して行こうとすると。

羅々がさみしそうな顔で俺を見てて。

そんな羅々の頭を撫でて。

「また、後で。チャペルで待ってる。」