目的地にまっすぐ向かって走る。

その途中にあるいつも使っている教室の隣を通る。

「…」

ふと、足を止めて。

早く行かなきゃいけないのに。

教室にも行かなきゃいけない気がして。

足を止めて、誰もいない教室の中に入った。

静かに教室の中に入って、いつも先生が座ってる教卓に座る。

“羅々を見てたら”

先生はそう言ってたけど。

一番前のここから。

一番後ろである私の席なんて、ここにたくさんの生徒がいたらきっと。

「…見えるはずない。」

じゃあ、どうやって見てたって言うんだろう。

…私より身長高いからな。

だから見えたのかな。

そんなどうでも良い事を考えつつ。

教卓に額をくっつけると。

…?

何あれ。

教卓の下に黒くて長方形の何かが落ちてて。

教卓に隠れて他の人には見えなかったのかもしれないけど、座って額をくっ付けた私にはバッチリ見えた。

それを屈んで拾い上げる。

パスケース?

誰のだろう?

中に何か名前がわかるものがあるかもしれないと、そのパスケースを広げると。

「…っえ、」

そこに、あったのは。