ざわざわとした舞台の下を気にも止めてない様子で。

「…王子様?」

「こんなヒールの高い靴じゃ、走れないでしょう。」

「っでも…っ」

「私は、貴女がいれば良い。」

その言葉に。

再び、静かになる。

私の心臓は、さっきのそれより早く、動き出す。

「貴女がいれば、ガラスの靴なんて、どうでも良い。」

「…お、「私と、一生、一緒にいて下さい。」

「…っ」

劇とは、思えない。

そんな声が、舞台の下から聞こえて。

私は、涙を流しながら。

「…っはい」

先生は優しく笑って。

私の前に立って。

先生の両手は私の頬を優しく包む。

そっと顔を近づけて。

「“貴女が好きです、シンデレラ。”」

そっと目を瞑るのと同時に、舞台が暗転する。

幕が下がり出すと。

割れんばかりの拍手が響いた。