「“貴女が、私の探し求めていた女性だったのですね。”」

靴を履かせてくれている先生を控えめにみながら。

「“一緒に来てください。私と、一緒に。”」

その声に合わせて先生に手を引かれて。

走り出す。

その時。

…っ

靴がきちんと履けてなかったのか、ガラスの靴が片方脱げてしまった。

どうしよう。

このまま、話のキーポイントとなるガラスの靴をほかってはいけない。

先生なら、アドリブでも上手く対応してくれるはず…

「王子様。待って下さい!」

観客に、気づかれてはいけない。

後方にある、ガラスの靴を指差しながら。

「ガラスの、靴が、片方…」

「…」

その様子を見た先生はしばらく考えた後、私の足元にしゃがんで
「…私の肩につかまって下さい。」

言われた通り、そっと手を置く。

すると先生はもう一方のガラスの靴も脱がして。

驚く私を見上げて。

「ガラスの靴はここで置いて行きましょう。」