それからしばらくすると、段々と他の生徒達も姿を見せて。

人気が無かった廊下や教室に挨拶の声がこだまする。

先生も
『朝の会議があるから。』
と教室を出て行ってしまって。

一人、教室の自分の席で台本を、間違って覚えてる所はないか、読み落としてる所はないか、確認していると。

「…はよっす。」

眠たそうなその声に、顔を上げる。

「おはよう、三浦君。」

「…朝から台本読んでんの?熱心だな、俺にはねーわ、その熱心さ。」

「…嘘つき。三浦君、記憶力良いから台本、すぐ覚えたんだってね。華ちゃんが言ってた。」

私のその言葉に。

三浦君は少し顔を赤くしながら。

「何言ってんだ、あいつ…」

その言葉に、私が笑っていると。

三浦君はすねたような顔で、
「長谷川は何でこんな早いんだよ。」

「…え。」

「いつも早いけど、今日は俺、長谷川がいつも来る時間より早いぜ?」

“先生が、明日も朝早くおいで、って言ったから。”

なんて、絶対に言えない。

私が言葉に詰まると。

三浦君はさっきの反撃とばかりに、私の反応を見てニヤニヤしながら追求してくる。

「何だよ、もしかしてあれか?加藤と何かしてたんじゃねーだろうな。」

「…」

顔が赤くなっていくのが、自分でも分かる。

「お前らさ、いつも、神聖な教室でいちゃいちゃしすぎなんだよ。」

“神聖な教室”

三浦君がそんな事言うなんて。

「お前ら「ちょっと、優希!」

まだ話し続けようとした三浦君の声に、聞き覚えのある声が重なる。