先生とシンデレラ

少しショックを覚えながらも。

止めよう。

考えるのを一回ストップしよう。

もう一回、元いた教卓の椅子に腰を下ろして。

っていうか、万が一。

万が一、羅々が許したとして。

いや、何かそれも嫌だけど。

そうだったとしたら、華が出て来るのか?

それとも姉さんか?

…どっちも、やだ。

そんな事を思いつつ。

時計をちらっと見ると、いくら慣れない小袿と言っても着替えるのに十分な時間は経っていた。

散々悩んだ末、中を見ないようにしながら隣の教室のドアにはめてあるガラスを手の甲で二・三回叩く。

「…っきゃ、」

と言う控えめな声が聞こえて。

…驚かせたかな。

やっぱり、他のやり方だったほうが…

でも、こうしないともっと恐ろしい事になっていたかもと自分を説得する。

「…羅々。もう着替えたの。」

俺のその声に羅々は、少し緊張したような声で返事をする。

「は、い…」