先生とシンデレラ

今日の練習も無事終わり、帰る準備をして教室にいる羅々を迎えに行こうとすると。

「華。」

優希に呼び止められて。

ゆっくりと振り返ると。

「悪いんだけどさ、もう少し自主練、付き合ってくんね?」

優希は申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせて。

その言葉に、私は少しどきりとしながら
「…ちょっと待って。羅々にメールしてみる。」

そう言いながら、震えそうになる指を一生懸命に動かして羅々へのメールを打った。

“今日、一緒に帰らなくても平気?”

するとすぐに返事が来て。

“全然大丈夫!私、先生ともう少し練習していくね。”

そのメールの内容を見て、少し笑う。

…また、先生か。

ここまで“先生”、“先生”言われるとヤキモチやきそう。

そう思いながら画面を眺めていると、何時の間にか横にいた優希が私の耳元で
「…また、先生かよ。」
と言った。

「…っ?!」

思わずバッと振り返る。

「っちょっと!勝手に人のメール、覗かないでよ!」

その言葉に優希は笑いながら
「そんな所で見る方が悪いっ!」

「…はぁ?!じゃあどこで見ろって言うのよ!」

その言葉に優希は、うるさい、とでも言うように耳を指でふさいで。

私が思わず、ぐっ、と黙ると、優希は満足そうに笑って
「ほら、若紫、やるぞー。」
と言って背を向けて武道場のドアの近くに立った。

頬が熱くなるのを、止められない。

「若紫と光源氏が京の都に上った場面からな!」

その笑顔に、私は何度胸をときめかせてきただろう。