「…では、選ばれた四人は中央に並んで下さい。」

右から順に、芽維ちゃん、私、三浦君、高田君の順で並ぶ。

すると審査員が、
「…最終審査のテーマは、
演劇です。」

…“演劇”?

審査員は、舞台袖から出てきた生徒が持っていた赤と青のボックスを受け取って。

「…女子は赤、男子は青、のボックスから中に入ってるたくさんの紙から一枚だけ選んでもらいます。その紙にそれぞれがする演劇の名前が書いてあります。主人公は代表者、その他の配役はクラスの中から選んで下さい。クラス全員が出る様にするのが第一原則になります。」

最後は、クラス皆で勝ちましょう、って事なのかな…

「まずは男子、三組福原君からどうぞ。」

福原君が差し出されたボックスに手を入れる。

福原君の手にした紙に書かれていたのは。

「福原祐、千一夜物語《アラビアン・ナイト》!」

女子生徒からの歓声があがる。

続いて三浦君が紙をボックスの中から取り出す。

三浦君の開いた紙には。

「三浦優輝、源氏物語!」

さっきとは比べ物にならない黄色い声。

あの、三浦君が。

少し、ヤンキーっぽい三浦君が。

源氏物語?

光源氏?

お母さんと禁断の恋?

「…ふふ」

私が思わず笑うと、三浦君が
「くそ、何で源氏物語なんだよ…」
と、顔を赤くしながら言って。

「…楽しみだね」
私がそう言うと。

「長谷川、嬉しくない…」
と言った。

「…続いて二組、奥田芽維」

芽維ちゃんが、赤いボックスから一枚の紙を取り出して、開けた。

「奥田芽維、白雪姫!」

白雪姫?

そんなの。

芽維ちゃんに、ぴったり。

私に勝ち目なんて…

「…続いて四組、長谷川羅々。」

ゆっくりとボックスの中に手を入れる。

たくさんの紙から、たった一枚を。

これかな、と思った一枚を。

これじゃなきゃいけない気がした、一枚を。

引いて、手の中で広げる。

心臓の鼓動が鳴り止まない。

そこに、

書かれていた、

文字は。

「…長谷川羅々、シンデレラ!」

私は、ガラスの靴を履いて。

王子様が来るのを待たなきゃならない。