その言葉を聞いた花森は、バカみたい、と笑った。

「そんな危険な事して何になるんです?先生の立場が危うくなるだけですよ。」

「…そうだね」

「先生を辞めさせられるかもしれないんですよ」

「それでも、きっと後悔、しないだろうからね。」

その言葉に花森は溜息をゆっくりと吐いて。

「先生ってアホだったんですね。」

「…」

「期待外れでした。先生みたいなかっこ良い人が彼氏だったら良いななんて、浅はかな考えだったんですけどね、最初は。」

花森は腕を組んで壁に持たれる。

「先生も…前の彼氏も、羅々、羅々、言うから意地になっちゃった。」

花森は遠くを見つめて。

「羅々ちゃんが悪くない事なんて、最初からわかってたのに。」

下を向いてはっ、と笑う。

「…ただの、逆恨みです。」

静かにそう言う花森を

「本当に大好きな人だったから」

どうする事も出来なくて。

「…先生は馬鹿みたいだと思うかもしれないですけど。」

「…」

「…先生みたいに。上手くいかなくても、想い続ければ良かった。」

「人をそれだけ想える人は。」

花森がゆっくりと顔を上げる。

「…それだけ想ってもらえるって事だよ。」

俺は言葉を選びながら。

「花森のその経験は、決して無駄なんかじゃなかったんじゃないかな。」

笑って。

「花森は十分魅力的なんだから、堂々と胸を張ればいい。」

言葉をかける。

「羅々じゃない、花森だけが持ってる魅力に惹かれる人だって絶対にいるから。」

花森が。

少しでも。

「羅々じゃなくて、花森じゃなきゃダメな人が。」

前に進める様に。