次の日の昼放課、いつもの様に社会科準備室に行こうと、歩いていると。

「えっ!瑠璃マジで?!」



その途中の女子トイレの中から声がした。

思わず足を止める。

「…マジだよ。さっきから言ってんじゃん?」

花森の鼻で笑う様な声がする。

「でもさ、別にそれ羅々ちゃんが悪いわけじゃなくない?」

…羅々?

首を少しひねりながら。

「何言ってんの?!あの子が色目使ったに決まってんじゃん!!
そうじゃなかったら…っ」

ドンッ

思わずトイレの入り口のドアを叩く。

「…」

中が静まり返った。

「…花森。」

返事はない。

「…出ておいで。」



「いるのはわかってるよ、あんな大きい声で話されてたら。」

花森じゃない声が、やばいよ、と言った。

「…羅々が、何したって?」

そう言うと。

カチャリ

とドアが開いて花森と一人の女子生徒が出て来た。

女子生徒は、すみませんでした、と言ってさっさと走っていく。

そんな花森を冷たく見下ろす。

「…で。羅々が何したって。」

花森は俺をきっと睨んで。

「…先生には!関係ありません!」

「先生を巻き込んだくせに、よく言うね。さっきの話聞いてたら、一方的な羅々への恨みでしょ。先生関係なかったのに、巻き込んだの花森だよ。」

「…っ」

花森はサッと下を向いて。

唇を、噛んだ。

それから花森は笑いながら俺の方を見て
「先生、羅々ちゃんの事買いかぶりすぎなんじゃないですか」

「…は」

「先生の事なんか本当は好きじゃないに決まってます。」