先生とシンデレラ

「…ちょっと前、蓮君一人で来たんだよ。披露宴のドレス選びたいからって。」

“ちょっと前”?

それっていつ?

だって最近はずっと一緒にダンス練習に…

“今日は先生来ないんですか”

“そんな顔するくらい残念なの”

“大切な、用事があるんだよ”



「羅々のためにって…知らなかったの?」

頬に

涙が伝う。

私にドレスを選ぶ事が大切な用事?

それだったら。

だったら。

何で。

由紀さんは私が泣いてるのを感動だと勘違いしたようで
「…羅々ちゃん、本当に蓮君に愛されてるんだね」
と私の背中を優しくさすってくれる。

「…っ違うんです…」

違うの。

涙で濡れた顔を覆いながら。

「…え?」

「…先生は、私の事、愛してなんか無いです…っ!」

由紀さんの手の動きが、止まった。

「…“先生”?」