先生とシンデレラ

車のドアを開けると、店の前には由紀さんが立っていた。

微笑みながら会釈をする。

「何度も無理なお願いしてすみません。」

俺がそう言うと由紀さんは笑って

「いいよ。蓮君にはお世話になってるもん。」

…お世話したつもりなんてない。

由紀さんは、優しい。

俺に遠慮させない様に。

そう思いながらも笑う。

「ありがとうございます」

由紀さんは俺が隣に立ったのを確認すると
「…少し選ぼうかなとも思ったんだけど…どうせ蓮君自分で選ぶからな、と思ってやめちゃった。」

俺は少し苦笑しながら。
「…そうですね。」

「….それにしても、結婚披露宴まであるなんて大変だねぇ」



少し、胸が痛い。

「…はい。でも、羅々のためですから。」

俺がそう言うと。

由紀さんはニコッと笑って。

「そう言うと思った。入って。」

ドアを開けて中にはいる。

「…えっと、動きやすい服だったよね。こっち。」

由紀さんについて行きながら、考えるのは羅々の笑顔だった。