先生とシンデレラ

車の外をボーッと見ていると、三浦君が
「…昨日は行けなくてごめんな。」



「…ううん。全然大丈夫だったよ」

“先生が代わりに一緒に踊ってくれたから。”

その言葉を押し殺して。

「でも、全然練習出来なかっただろ?…悪かったな。」

私は控えめに顔の前で、手を振って
「…いや、そんな事、無かったから…」

「?…!もしかしておかまと踊ったのか?!」

まるで信じられないとでも言う様に。

すると運転しているトオルさんが
「おかまって誰よぉ!ってか、私だって居なかったわよ!」

その言葉を聞いた三浦君はますます意味がわからないと言う風に
「?じゃ、誰と…」

言ってる途中で気付いた様だった。

罰が悪くて俯いてるのに、三浦君が顔をしかめたのがわかる。

「…加藤か。」

「…」

「…そうやって、勘違いさせる様な事ばっか「違うの!」

私は顔をパッとあげて、三浦君の声を遮った。

「…先生は、私が上達する様にって踊ってくれただけだから…」

「でも、それで長谷川が期待する事わかってるはずだろ」

「…してないよ。」

「…え?」

「期待なんかしてないよ…」

そう笑うと、三浦君は息を呑んだ。

「…したって意味ない事ぐらいわかってるもん。」

無理矢理笑い続ける私に。

三浦君は、ごめん、と言った。

私は、ううん、と言いながら窓の外を見る。

馬鹿みたい。

わかってた事なのに。

自分で自分の言葉に傷つくなんて。