私がそう聞くと先生は一瞬眉をひそめた。

それでもすぐにまたいつもの、何を考えてるのかよく分からない笑顔になって
「もちろん」
と言った。

「ー…っ。じゃあ…っ」

先生は笑顔のまま、ん?、と言う。

「何であの時、あの本番前の時、抱きしめたんですか…っ」

先生の笑顔が、消える。

「…」

「わけわかんな…っ「うるさいね」

言おうとした言葉をかき消されて。

先生の冷たい声に背筋が凍る。

「先生は羅々と優希がペアで良かったと思ってる。それは本心だよ。」

「…っ」

「何を勘違いしてるのか、先生にはよく分からないけど。」

先生はゆっくりと私を見て、笑顔を“作る”。

「…目を、覚ましなさい。」

私は今にも出そうになる涙を、必死で隠しながら、小さい声で
「すみません…でした…」
と言って急いで教室を出た。