先生とシンデレラ

ステージから下りて、控室に戻ろうとするとちょうど控室に続く階段の真横当たりにお姉さんと先生が立っていた。

「羅々ちゃん!」
とお姉さんに呼ばれたので、下を向いている先生への気まずい気持ちを隠しながら笑顔で駆け寄る。

「おめでとう。良かったわよ。」

「ありがとうございます。」

その間も先生は何も言わない。

するとお姉さんが先生の脇腹を肘で押して驚く先生に睨みをきかす。

先生は溜息をついてから
「おめでとう。よくやったね。」と言った。

…そんな面倒くさそうに言われても何も嬉しくなんか無いのに。

「…ありがとうございます」

上手くなんて、笑えない。

周囲に微妙な空気が流れ始めた時。

真衣さんが
「次は社交ダンスだったわね。」

「…あ、はい。」

「蓮、何かツテはあるの?」

先生はゆっくりと真衣さんの方に顔を上げて
「…ツテって何。」

「社交ダンスを教えてもらうツテよ!」

「…姉さんにツテがあるでしょ。」

「はぁ…」

真衣さんは、仕方ないわね、という風に頭に手を置いた。

「分かったわ。講師は私がなんとかする。」

その時、後ろから不意に肩に手を置かれる。

驚いて振り返るとそこには。

「よぉ」

「…三浦君。びっくりした…」

私が思わずそう言うと三浦君は焦った様に私の肩から手をどけて
「あ、わりぃ…」

「あ、ううん、そういう事じゃ無いの。後ろからだったから、誰か分からなくてびっくりしただけ。」

「…そうか」

三浦君はホッとした顔を見せた。

私はなぜかいたたまれない気持ちになって下を向きながら、うん、と言った。

しばらく無言が流れた後、急に三浦君が、
「おめでとう、一次審査通過、だな。」

「三浦君こそ…おめでとうだよ。私見てたけどいつもの三浦君じゃないみたいで、ちょっとドキッとしちゃった。」

笑いながらそう言うと。

「ほ、本当か?!」

何故か必死な顔で聞き返してくる。

…何か変な事言ったかな。

そう思いながらも。
「うん…」

三浦君は照れた様に笑って
「…っしゃ」
と言いながら小さくガッツポーズをした。

私もその様子を見て小さく笑う。

「二時審査も頑張ろうな。…一緒に。」

「うん。足でまといになるかもしれないけど一生懸命頑張るね。」

私がそう言ったすぐ後後ろから真衣さんの息をのむ音が聞こえて
「そうよ、貴方も社交ダンス羅々ちゃんと一緒に教わったらどうかしら!」

先生の顔が一気に歪んでいった。