先生とシンデレラ

階段を一つ一つ降りる。

ゆっくりと呼吸をしていると、次の順番の小林柚亜ちゃんが真っ白いドレスで、
「お疲れ様!すごく綺麗だったよ!」

と言ってくれた。

「…あ、えっと、ありがとう。柚亜ちゃんも頑張ってね…」

「うん、ありがとう!」

可愛く手を振りながら出て行った柚亜ちゃんを見送ってから辺りを見回す。

…先生、いないな。

もしかしたら控室にいるのかな。






静かに控室まで歩いてドアを開けると。

「…」

いない。

どこに行っちゃったんだろう

早くお礼が言いたいのに。

ゆっくりと横にあった大きな鏡を見る。

今頃になって、肩が震える。

私、大丈夫だったよね。

震える手をもう片方の手で包み込んで。

早く。

先生。

「…せん」
ガチャッ

ドアが開く音がして驚きながらそっちを見ると、心なしか息を弾ませてる先生が顔を出した。

「よかった、ここにいたんだね。どこに行ったかと…っ」

ドアを閉めようとしながら話し続ける先生の腕の中に飛び込む。

「羅々?」

ねぇ。

何で。

優しく私の名前を呼ぶくせに。
優しく笑いかけるくせに。
甘い言葉をかけて
首筋に証だって付けて
気のあるフリをするくせに。

私の背中に腕を回さないの?
何で、
抱きしめ返してくれないの?

「…どうしたの」

先生の声が、冷たい気がした。

わかんない。
先生って本当、わかんない。

「…いえ。なんでもありません。」

そう言って顔にかかった髪を耳にかけながら後ろに下がって先生の顔を見ると。

「…っえ」

見た事も無いような冷たい顔をしてた。

私が思わず固まると先生は急にニコッと笑って
「…良かったよ、羅々」
と言った。