薄紫色のウェディングドレスを着てプロのヘアメイクさんに綺麗にしてもらって。

綺麗なお花がたくさん散りばめられているスタジオで今は写真を撮っている。

緊張する…

私の真ん前にはたくさんの人。

皆が私の事を見てる。

いつものスタジオでもこんな一気に視線が集まった事は無くて。

「…羅々ちゃーん、どうしたのかなぁ?」

いつものカメラマンさんの不安そうな声と顔が見える。

むせ返るほどの香りがする花の中に座って
「…す、すみません…」

皆私の為に来てくれて
                  時間を使ってくれて
なのに。

手が震える

どうしよう
どうしよう…

私、どんな風に笑ってたっけ

カメラマンさんの私を呼ぶ声も聞こえなくなっていく。

皆、迷惑してるよね

早くしなきゃ

早くしなきゃ皆が迷惑しちゃう

うまく笑わないと

早く、

早く

はや「羅々」

不意に近くで先生の声がして、上を向くと
「…先生?」
すぐ近くに優しい顔で笑った先生がいた。

先生は震える私の手を包んで
「…羅々は先生だけ見てて」

「え…?」

だって。
先生だけ見てたら写真が撮れない。
また時間がかかってしまう。

「…いいから。わかったね」

そう思いながらも。
先生が優しく笑うから。

「はい…」

先生は私の返事を聞くとカメラマンさんの方に歩いて行った。

そしてカメラマンさんに何か言った後。

「…え」

先生がカメラを受け取ってかまえた。

「羅々、いつもみたいに笑って」