学校が終わった後先生と二人で来た事の無い駐車場である人を待っていた。

すると、突然駐車場に一台の赤色のスポーツカーが入って来て凄いスピードでこちらへ向かって来た。

「…えっ」

目の前で止まれるスピードじゃ無い。

私の目の前で…止まらない?

そう思って思わず目を瞑って頭を抱えた時。

「…っ羅々…っ」

先生が私を抱え込んだ時。

キキーッ

ものすごいブレーキ音の後。

止まった…?

ゆっくりと目を開けると先生が私を抱きしめたまま怖い顔をしてスポーツカーの方を睨んでいた。

ガチャッ

音のした方を見ると。

車の運転席のドアが開いた先には。

「やぁねぇ、いくらなんでも羅々ちゃんを引くわけないわよ」

「…っ真衣さん」

呆気に取られながら、サングラスをかけて笑う麻衣さんを見る。

「姉さん…」

「モデルの仕事はいつも時間との勝負なのよ。ここら辺は車が走らないからスピードを出しすぎたわ、ごめんなさいね。」

カツカツと高いヒールの音をさせ、白いワンピースをなびかせながらこちらに近付いてくる麻衣さんを、先生は怖い顔で睨み続けて。

「…間違えて引いてたらどうするつもりだったわけ」

「だから!誤ってるじゃない!」

「…誤ったら済む問題とそうでない問題がある。羅々を引いたりでもしたら、「そうね、悪かったわ…」

真衣さんの凹んだ姿を見て先生は気が済んだのか、溜息をついて
「…羅々、大丈夫だった」
そう言いながら私の頭を撫でた。

「あ、はい…先生、ありがとうございます」
私がそう言って笑うと先生は、そう…、と言って笑った。

その光景を見ていた真衣さんは前にも聞いた事のある様な言葉、
「…身内のラブシーンほど吐き気がする物はないわ。」
と言った。

「…何言ってんの、バカじゃない」
先生の毒舌もあいかわらずだった。