先生とシンデレラ

コンコンっと音がしてそれから、私の名前を呼ぶ声がする。

「…はい」

震える声で返事をして。

ゆっくりとドアが開いた先には優しく微笑む先生の顔。

「…せんせ」

先生は部屋の中に入って微笑み続けながら私に近付いてくる。

顔の真ん前に自分の顔を近づけて私の頬を優しく包む。

ずっと微笑んだまま。

「…先生?」

「…このまま、」

「え?」

「…何処かへ行けたら良いのにね」

…どういう意味?

先生は一体何が言いたいんだろう?

「どこへ…」
私が思わず呟くと。

「…さぁ。それより由紀さんに色々して貰ったんだね。」

先生はゆっくりと私の頬を撫でてから
「…さぁ、次に着替えておいで。」

そう言って出てきそうな先生に急いで呼び掛ける。

「…どうですか…っ」

先生はその言葉を聞くと少し驚いた様に振り向いてまた微笑む。

「…何が?」

…っ

「…何も」

それ以上は聞けなくてせっかく勇気を出して放った一言も自分で打ち消してしまう。

すると先生は
「?
あぁ、羅々がって話ね。」

先生は恥ずかしさから俯く私にもう一度近付いてきて
「当たり前すぎて言うの忘れてたよ。」

俯く私の顔を、スーツのポケットに手を突っ込みながら腰を折って屈んで、笑いながら覗き
「凄く、綺麗だ。」

「…っ」

「顔、赤いよ。」

「〜〜〜っ」

先生の近い顔を押し戻す。

先生は少し笑って

「…次のドレスも楽しみにしてる。店員さんが選んでくれたドレスだから絶対似合うよ。」

「…え」

先生は笑いながら、何?、と言った。

「…何でもありません…」

「…そう。じゃあ、また後で。」

先生の後ろ姿を見送ってから。

「…先生が選んでくれたんでしょう?何で…」

ねぇ、先生の気持ちが、わかんないよ…