先生とシンデレラ

先生の昔話に花を咲かせて、ひと段落つくと。

「…それにしても遅いですね。」

腕時計を見ながらそう呟く。

「蓮君昔から優柔不断だから。」

「…それにしても、もう一時間
ですよ?」

由紀さんはクスクス笑って
「…馬鹿だねぇ、自分の大事なお嫁さんの着るウェディングドレスだよ?いつも以上に時間を掛けるに決まってるじゃん。」

その言葉には嘘が無い気がした。

だって。

ただのどうでもいい生徒が着るドレス選びに時間はかけないよね?

少しは先生の中で特別だって、そう思ってもいいよね?

「…それより、何で羅々ちゃんは蓮君を選んだの?羅々ちゃんだったら、選り取り見取りだったんじゃない?」

「あえて一つ選ぶとすると…凄く優しいくて努力家だから。でもそれを表立って見せようとしなくて。そんな所がかっこいいなって。」

先生との数えられるほどしかない思い出を思い出しながら。

「それに少しの変化にも気づいてくれる所とか…そういう所全部好き…です…」

言ってる途中で恥ずかしくなって来て語尾が消える。

そんな私を由紀さんは
「蓮君の顔じゃ無くて?」

「…顔…?人って顔で好きになるものですか?」

私がそう聞くと。

由紀さんは目を見開いてそれから豪快に笑った。

「…あははははっ。そう。そうね、そうだよね、あははははっ。」

何でそんなに笑うんだろう?

由紀さんはひとしきり笑ったあと私の上の方を見て
「…だって。よかったね、蓮君。」