彼氏に一方通行

「けど……俺、ほのかにだけは優しくしたいって、心ん中では一応思ってんだけどね。人間ってさ、なかなか思い通りにいかねぇよな?」


そう言って、田所は照れ臭そうに苦笑した。



くぅー……。

田所は卑怯だ。いっつもこうやって、さり気なく、ほんのり甘い言葉を吐いて、私の心を鷲掴む。狡い。



両手をベッドの上につき前傾姿勢をとった。そうして田所に自ら接近。


「田所……」

切ない想いを乗せて名を呼んだ。



田所も、正座している私の足元に腕を突き立てた。そして――


ゆっくりと……。うっかりすると見惚てれしまうほどの美麗な顔が近付いてきた。田所がほんの少し顔を傾ければ、目に掛かる長めの黒髪がサラリと横へ流れる。

たったそれだけで、ドクンと心臓が跳ねた。



そっと瞼を落としたらすぐ、唇に撫でるような柔らかい感触。


ゾクリ――

身体の真ん中が悦びに震えた。