二人のひみつ基地



「チワース。見学していいっすか?」


そう言ってスタジオに入って来たのは光哉だった。


久しぶりの光哉は少し引き締まった感じがした。


和樹から連絡を受けて部活が終わり次第、ここに来たようでジャージ姿だった。


「光哉―」


伊織君に絞られていた和樹が光哉に駆け寄った。


「どうしたんだよ。和樹、半泣きじゃん」


「どうもこうもないよ。お前、これ出来るか?」


そう言ってサンバホイッスルを光哉に差し出し、さっきから何度も伊織君に聴かされているipodを差し出して光哉に渡す。


光哉が曲を聞き終えると
「こんな感じの音だよね」


「ピッピーピピピピー」


サンバホイッスルの横についてある空気穴を指で抑えて微妙に音を調節した。


伊織君がパチリと指を鳴らして
「光哉君バッチリ。結構肺活量あるね。今の最高だった」


「……」


和樹が無言になった。


「俺……サッカーでブラジル好きだったし……」


光哉が項垂れた和樹に意味不明な事を言ってフォローをした。


「光哉がエリートに見える」


和樹にイライラしていた亜美がまた失礼な事を言った。


「いいなぁ。みんな楽器が出来て。私もピアノ習っておけば良かったな」


愛子が頬を膨らませて言う。


「私も新体操なんか辞めて伊織君とピアノを習えば良かったかな」


「えっ?沙織ちゃん新体操やってたの?」


健也君が私の方に振りかえる。


「うん」


「結構、小さい頃は色んな技見せてくれたよね」


伊織君が笑いながら言う。


「伊織、今、服脱がしてやらせているんじゃないだろうな」


健也君の言葉に私は健也君が持っていたスティックを奪って
「そんな事するはず無いでしょ」


「イッテェー」



頭を数回打ってやった。