それから何度か練習が繰り返されたが陸君の乗りと和樹君のホイッスルがいまいち気に入らない伊織君が急に捲し立てた。
「陸!お前ナンパした事ないだろ?もっと弾けろよ。もっと感じ出せないか?」
「そう言う伊織もないだろ?」
「無いけど俺はボーカリストじゃないし。ギターは完璧に弾いているつもりだけど」
陸君が何を言っても音楽に関しては伊織君に敵わない。
「伊織、道歩いてても女の子が振り向いてくる陸がさ、この歌の心情が分かるはずないんじゃないか?」
海人君が陸君をフォローする。
確かに……陸君には理解し難い詩のように感じる。
「陸と和樹君は今から裸のブラジル人でもナンパして来い!」
イライラし始めた伊織君が訳の分からない事を言い出した。
陸君がマイクを持ったまま、またさっきと同じように両膝をついて前に倒れ込んだ。
「い……伊織。裸のブラジル人って何処にいるんだよ」

