翌朝一番にバンドの見学に行かないかと愛子にメールをした。


もうすでに起きていたらしくて直ぐに二つ返事のメールが届いた。


三日後の十時過ぎにこの前の駅前で愛子と待ち合わせをした。


「沙織、久しぶりー。お多福大変だったね」


「うん、大変だった。死ぬかと思ったよ」


愛子が私の顔をじっと見ながら
「ちょっと痩せた?」


「うん、痩せたかな。食事が食べられなかったから」


そう言って二人は国道沿いにある歩道を歩きだした。


ゴールデンウィークまっただ中で国道はぎっしりと家族連れの車が渋滞していた。


信号が青に変わり横断歩道を渡った。

そう言えば、この横断歩道で光哉に告白されたのを思い出した


「ねぇ、愛子。光哉君どうしてる?」


「光哉?」


「うん」


「クラブに入ったらしいよ。合気道って言ってたかな」


「へー。意外。中学の時はサッカーしてたのにね」


「気になる?光哉の事」


愛子がいたずらっぽい顔で話し掛ける。


「そう言う訳じゃないけど……」


「でも、沙織、伊織君といい感じじゃん。今日は誘われたんでしょ?」


「うん、そうだけど……」


「いいじゃん。誘われただけ。私なんか陸君にアドレスも携帯番号も聞いて無いんだよ」


愛子が膨れっ面でそう言った。


「気軽に聞けばいいのに」


「うーん。聞いてくれるなオーラが出てるんだ。陸君」


「伊織君に聞いてあげようか?」


愛子は一回立ち止まってから、手を顔の前で合わせて


「聞いて欲しい」


「わかった。今日、こっそり聞いておくよ」


「うん」


愛子と顔を見合わせて笑いあった。