「沙織ちゃん。消毒出来たよ」
その声に目を開けるとニッコリ笑った伊織君が目の前に居た。
引きつった笑い顔。
唇の端にこびり付いた血が気になった。
「伊織君も顔を洗って血を流しておいでよ。消毒してあげる」
そう言いながら私は目の前に居る伊織君の唇の血に指を添えた。
すると伊織君が私の指を手のひらで覆い
「じゃぁ、血……舐めて」
「え?」
「俺の血……舐めて綺麗にして」
「……?」
キョトンとした私を見ながら
「ウソ、ウソ……冗談だよ」
そう言って伊織君がおどけて笑った。
私はそんな伊織君の肩に腕を巻き付けて顔を近づけ唇の血をペロリと舐めた。
錆びた鉄ってこんな味じゃないかと思った。
私の行動に言い出した当の本人のは、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしている。

