あの夜はどうかしていた。


もう、どこから見ても大人の男性に成長した伊織君と一緒にお風呂に入っ
た。

伊織君も同じ感覚だろうか?

あの夜は……どうかしていた。


足にこびり付いた血と泥をシャワーで綺麗に洗い流して伊織君に借りたTシャツとショートパンツに着替えた。

少し大きかったが仕方がない。

リビングに戻ると伊織君が枇杷を枝から採ってその綺麗に手入れされた長い指で器用に枇杷の皮を剥いていた。

「伊織君、枇杷好き?」

そう言いながら伊織君の隣に座った。

「うん、結構好きな方かな」

リビングには、ギターが五本とキーボードにシンセサイザー。

それとパソコンラックにCDプレイヤー。

ちょっとした音楽スタジオのようだ。